株式会社パイロットコーポレーション
東京都中央区京橋二丁目6番21号
使用済み筆記具のリサイクルプログラムを全国展開
「パイロットコーポレーション」さんは、1918年創立の総合筆記具メーカーです。持続的な企業活動を目指し、地球環境におよぼす影響を低減するため、さまざまな環境保全活動に取り組んでいます。使い終わった筆記具を回収してリサイクルする「使用済みペンリサイクルプログラム」も、その一つです。
同社の経営企画部サステナビリティ推進室のシニアコンサルタントで、ペン回収担当の吉田さんにお話を伺いました。
まず、パイロットコーポレーションさんについて教えてください。
万年筆やボールペン、シャープペンシル等幅広い製品群を製造・販売している総合筆記具メーカーです。おかげさまで2018年に創立100周年を迎えました。
日本の筆記具は海外で非常に評判が良く、弊社の製品では特にボールペンや、こすると消えるペン「フリクション」が人気です。現在、190以上の国と地域でさまざまな筆記具を販売しており、日本での売り上げが約30%、海外が約70%となっています。
環境への取組に関する目標の設定はありますか?
国内単体売上高あたりの産業廃棄物排出量を、2030年にまでに2021年(基準年)比で10%削減する目標を設定しています。持続可能な社会の実現に向けて、環境負荷の低減等、環境課題の解決に取り組んでいます。
今後の数值目標
【温室効果ガス】
スコープ1(※1)、スコープ2(※2)排出量(総量)2030年までに25%削減(基準年(2021年)比)
(※1)スコープ1:燃料の燃焼や、製品の製造などを通じて企業・組織が「直接排出」する温室効果ガス
(※2)スコープ2:他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出される温室効果ガス
【取水量】
単体売上高あたり取水量2030年までに10%削減(基準年(2019年)比)
【廃棄物】
単体売上高あたり産業廃棄物排出量2030年までに10%削減(基準年(2021年)比、2025年から前年度比1%削減)
プラスチックごみ削減のために、どのような取組を行っているのでしょうか? 取組を始めたきっかけについてもお聞かせください。

使い終わった多くの筆記具がリサイクルされずに廃棄されている事に着目し、メーカーとしての責任のもと、何ができるかをいろいろ検討していました。そんな時にテラサイクルジャパン様に、本来一般ゴミとして廃棄されてきたプラスチック製の使用済み筆記具を回収してリサイクルするというシステムをご提案いただき採用いたしました。まず身近なところからと、社内で取組を開始したのが2020年。翌年には、試験的に東京エリアの文具店さんの約30店舗で試験運用を行いました。店頭に回収ボックスを設置していただくのですが、当社の筆記具以外も回収するのはどうかという意見があるなかあえて、国内外を問わずどのメーカーのものでも、プラスチック製の筆記具であれば回収を受けるという形で取組をスタートさせました。これが「使用済みペンリサイクルプログラム」です。筆記具メーカーで店頭に回収ボックスを置いているところは、ほとんどないと思います。

取組の輪は、2022年には全国の文具店さんの約100店舗に、さらに2023年からは学校や自治体などにも広げていきました。そのきっかけとなったのは、街で回収ボックスを見た神戸の高校生からの「自分たちもやりたい」という連絡や、ある自治体の環境部長様からの「ぜひ取り組みたい」というメールでした。現在、学校が175校、自治体は約50と、いろいろなところで取り組んでいただいています。すると今度は、学校に来て話をしてほしいというお話をいただき、これは首都圏エリアだけですが、「身近な筆記具でSDGsを学ぼう」といった環境学習の出前授業にも取り組み始めました。
出前授業では具体的にどのようなことを行うのでしょう?
使用済みの筆記具を解体し、金属やゴムなどを外してプラスチックのパーツごとに分解します。そして水につけて、浮いたプラスチック、沈んだプラスチックを確認します。プラスチックには水に浮くもの、沈むものがあるということだけでも、皆さんびっくりしますね。また、使用済みペンリサイクルプログラムから生まれたリサイクルボールペンの組み立てや、インクを補充して本体を大切に長く使うSDGsな蛍光ペンをインク補充しながら組み立てるというワークショップもやっています。地方の学校の場合は、必要なものを先に送っておいてリモートで行うこともできますし、環境イベントなどに参加して行うこともあります。

福岡県での取組の状況は?
福岡県にも私どもの支店があり、福岡県庁や福岡市役所等で取組を行っています。現在、福岡県内で取組みを行っていただいている文具店は16店舗、自治体関係が13、学校は21校です。全国的に見ても多い方ですね。


取組の効果やお客様の反応はいかがですか?
「使用済みペンリサイクルプログラム」は、どのメーカーのものも回収しているというのが大きな特徴で、「その方が取組しやすい」と皆さんプラスに捉えてくださっているようです。
取組の効果としては、これまでに約9.4トン(2025.4末)の使用済み筆記具を回収しました。1本が大体10グラム弱ですから、約94万本になります。中には金属なども入っていますが、それなりに街からプラスチックごみを減らす役割は果たしているのかなと思います。
さらに、うれしいことに裾野がどんどん広がっています。社内でも驚いているのですが、2024年の秋はびっくりするほど毎日、学校から問い合わせメールが届いて、9月、10月はそれぞれ10校ほど参加校が増えました。


また、弊社の商品にボードマスターというホワイトボード用のマーカーがあって、カートリッジでインクの交換ができます。「使い捨てではなくカートリッジ式なので非常にエコですよ」と売り込んでいますが、お客様から時々、「このカートリッジは最後、捨てるんだよね」と言われることがありました。このマーカーは本体もカートリッジもポリプロピレンでできているので、単一素材で回収ができます。そこに着目して、弊社のボードマスターを導入している学校に限りますが、使用済みの本体とカートリッジを送ってもらえれば、アップサイクルした定規や、リサイクルボールペンを差し上げる取組みを行っています。今、20校が参加していますが、さらにボードマスターをお使いいただいている福岡市などの学校が、2025年度はこのプログラムに参加したいと要望されています。
このようにペン回収がきっかけとなって、環境に対するいろいろなプログラムが出来上がってきているところです。
回収した筆記具はどのようなものに再生しているのでしょうか?

今は筆記具にリサイクルすることがメインです。2023年には、回収した筆記具から抽出したポリプロピレンを、再度ポリプロピレンの部品にリサイクルした3色ボールペンや啓発品Re.Penジュースの商品化が出来ました。(参考 https://pilot-penrecycle.jp/topics/i16/)
ただ、マテリアルリサイクル(使用済みの製品や部品を原材料に戻し、再び同じ製品や部品の原料として利用するリサイクル方法)は単一の素材に戻さなければならないので、大変です。例えばボールペンには10種類ほどのプラスチックを使っているため、回収したものを分離するのが本当に大変で、非常に難しかったですね。
ほかにも、弊社ではペットボトルなどを再利用したボールペンや、海洋プラスチックごみからリサイクルした再生樹脂を使用したボールペンなどを作っています。

最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。
これは子どもたちにいつも伝えていることですが、プラスチックは悪者ではなく、うまく付き合っていくことが大切だと思います。プラスチックにもすごく良いところがあるので、全てを否定するのではなく、リサイクルの方法や捨て方のルールを守ってうまく付き合っていただきたいですね。
あとは、万年筆などの修理できるものは文具店さんにご相談いただいたり、ボールペンなどはレフィル(替え芯)を交換いただいたりして、本体を長くお使いいただければと思います。
会社・店舗情報

株式会社パイロットコーポレーション
- 住所 東京都中央区京橋二丁目6番21号
- ホームページ https://pilot-penrecycle.jp/